- FAの人的補償について詳しく知りたい
- Aランク?Bランク?ルールがよく分からない
- 過去の人的補償はどのような選手がいたの?
選手の移籍で盛り上がる、プロ野球のシーズンオフ。FAの人的補償も大きな話題ですが、ルールを難しく感じている人は多いです。
筆者はプロ野球を30年以上観てきました。シーズンオフの話題も欠かさずチェックしています。
そこでこの記事では、人的補償のルールをまとめて解説し、過去の人的補償選手もご紹介します。
この記事を読めば、人的補償に詳しくなり、今以上にプロ野球のシーズンオフを楽しめます。
以下の記事では、シーズンオフの話題をまとめています。
人的補償とは
人的補償とは「FA権を使って選手が移籍した際、前所属球団が移籍先球団から選手1人を指名、獲得できる補償制度」です。
FA(フリーエージェント)
- プロ野球におけるFAとは、選手が他球団と自由に交渉・契約できる状態
- FAとなる権利を「FA権」と呼ぶ
- FAは「国内FA」と「海外FA」に分かれている
FAの補償は、人的補償だけではありません。金銭で支払う「金銭補償」もあります。
→プロ野球のFA(フリーエージェント)とは?取得条件や補償を解説!
人的補償が必要な理由
人的補償が必要な理由は「一方的な戦力低下を防ぐため」です。
選手が何年も1軍登録されることで、ようやく取得できるFA権。何年も1軍登録されるのは主力選手の可能性が高く、FAでチームから抜けるのは大きな痛手です。
また、チーム同士の戦力差が広がりすぎると、ペナントレースで上位チームと下位チームがはっきりと分かれてしまいます。プロ野球の興行的にもよくありません。
FAによる一方的な戦力低下を防ぐために、人的補償制度があります。ただし、FA移籍によって人的補償が必ず発生する訳ではありません。
人的補償の有無はFA選手の「旧年俸のランク」で決まります。
旧年俸のランク
FA選手は前所属球団での旧年俸順にランク付けされています。ランク付けされるのは、日本人選手のみです。外国人選手は含まれません。
ランク | 旧年俸 |
Aランク | 日本人選手の旧年俸1~3位 |
Bランク | 日本人選手の旧年俸4~10位 |
Cランク | 日本人選手の旧年俸11位以下 |
人的補償が必要なのはAランクとBランクです。Cランクでは人的補償が必要ありません。金銭補償も同様です。
年俸が同じ場合、旧年俸のランクはどうなる?
- 年俸が同じ選手を比べて、出場登録日数の総数が多い選手→順位が下になる
- 出場登録日数の総数も同じ場合、年齢が上の選手→順位が下になる
年俸が同じ場合、出場登録日数や年齢でランクを決めます。
ランクによる補償内容
補償が必要なのはAランクとBランクですが、補償内容が異なります。
1回目のFA移籍 | 人的補償あり | 人的補償なし |
Aランク | 選手1人+旧年俸の0.5倍の金銭 | 旧年俸の0.8倍の金銭 |
Bランク | 選手1人+旧年俸の0.4倍の金銭 | 旧年俸の0.6倍の金銭 |
Cランク | なし | なし |
2回目以降のFA移籍 | 人的補償あり | 人的補償なし |
Aランク | 選手1人+旧年俸の0.25倍の金銭 | 旧年俸の0.4倍の金銭 |
Bランク | 選手1人+旧年俸の0.2倍の金銭 | 旧年俸の0.3倍の金銭 |
Cランク | なし | なし |
人的補償のルール
- 指名できる選手
- プロテクトリスト
- プロテクトリストを2球団に提出するケース
- 人的補償での移籍拒否
人的補償で指名できる選手
人的補償はどの選手でも指名できる訳ではありません。以下の選手以外から指名する必要があります。
- 移籍先球団がプロテクト(保護)した28人の選手
- FA権取得により外国人枠の適用外になった選手を含む外国人選手
- 直近のドラフトで獲得した新人選手
- 育成契約選手
プロテクトリスト
人的補償では、移籍先球団がプロテクトリストを作成する必要があります。人的補償で取られたくない選手28人を決定、リスト作成後に前所属球団へ提出します。
- FA権を行使した選手と、移籍先球団の契約締結がコミッショナーから公示された日から、2週間以内にプロテクトリストを前所属球団へ提出
- 前所属球団が人的補償を選ぶ期限は、FA選手の契約締結がコミッショナーから公示された日から40日以内
このプロテクト可能な28人という数字ですが、現在の一軍登録人数が31人なので、そこまで余裕のある人数ではありません。一軍の主力選手に加えて、期待の若手やチームに貢献してきたベテランも含めると、28人はすぐに埋まってしまいます。
特に若手とベテランのどちらを重点的にプロテクトするのか、ファンの間でも意見が分かれやすいです。
プロテクトリストを2球団に提出するケース
同じ年に2球団からFA選手2人(AランクまたはBランク)を獲得した場合、2球団にプロテクトリストを提出します。
プロテクトリストを2球団に提出するケースでは、リストごとにプロテクトする選手を変えられます。
- 「投手がほしいA球団」に対するプロテクトリスト
- 投手を取られないよう、投手中心にプロテクト
- 「内野手がほしいB球団」に対するプロテクトリスト
- 内野手を取られないよう、内野手中心にプロテクト
相手球団がほしいポジションに合わせて、プロテクトする選手を変えられます。
人的補償に指名された選手が移籍を拒否したら?
万が一、人的補償に指名された選手が移籍を拒否すると「資格停止選手」となります。資格停止選手は処分が解除されるまで試合出場できません。
過去の人的補償選手一覧
ここからは過去の人的補償選手をご紹介します。
年 | 人的補償選手(前所属→移籍先) | FA移籍選手 |
1995年 | 川邉忠義(巨人→日本ハム) | 河野博文 |
2001年 | 平松一宏(巨人→中日) | 前田幸長 |
2001年 | ユウキ(近鉄→オリックス) | 加藤伸一 |
2005年 | 小田幸平(巨人→中日) | 野口茂樹 |
2005年 | 江藤智(巨人→西武) | 豊田清 |
2006年 | 吉武真太郎(ソフトバンク→巨人) | 小久保裕紀 |
2006年 | 工藤公康(巨人→横浜) | 門倉健 |
2007年 | 赤松真人(阪神→広島) | 新井貴浩 |
2007年 | 福地寿樹(西武→ヤクルト) | 石井一久 |
2007年 | 岡本真也(中日→西武) | 和田一浩 |
2010年 | 高濱卓也(阪神→ロッテ) | 小林宏之 |
2011年 | 藤井秀悟(巨人→DeNA) | 村田修一 |
2011年 | 高口隆行(ロッテ→巨人) | 大村三郎 |
2012年 | 高宮和也(オリックス→阪神) | 平野恵一 |
2012年 | 馬原孝浩(ソフトバンク→オリックス) | 寺原隼人 |
2013年 | 一岡竜司(巨人→広島) | 大竹寛 |
2013年 | 藤岡好明(ソフトバンク→日本ハム) | 鶴岡慎也 |
2013年 | 鶴岡一成(DeNA→阪神) | 久保康友 |
2013年 | 脇谷亮太(巨人→西武) | 片岡治大 |
2013年 | 中郷大樹(ロッテ→西武) | 涌井秀章 |
2014年 | 奥村展征(巨人→ヤクルト) | 相川亮二 |
2016年 | 金田和之(阪神→オリックス) | 糸井嘉男 |
2016年 | 平良拳太郎(巨人→DeNA) | 山口俊 |
2017年 | 尾仲祐哉(DeNA→阪神) | 前田大和 |
2017年 | 高木勇人(巨人→西武) | 野上亮磨 |
2018年 | 内海哲也(巨人→西武) | 炭谷銀仁朗 |
2018年 | 竹安大知(阪神→オリックス) | 西勇輝 |
2018年 | 長野久義(巨人→広島) | 丸佳浩 |
2019年 | 小野郁(楽天→ロッテ) | 鈴木大地 |
2019年 | 酒居知史(ロッテ→楽天) | 美馬学 |
2020年 | 田中俊太(巨人→DeNA) | 梶谷隆幸 |
2021年 | 岩嵜翔(ソフトバンク→中日) | 又吉克樹 |
2022年 | 張奕(オリックス→西武) | 森友哉 |
2022年 | 田中正義(ソフトバンク→日本ハム) | 近藤健介 |
2023年 | 日髙暖己(オリックス→広島) | 西川龍馬 |
2023年 | 甲斐野央(ソフトバンク→西武) | 山川穂高 |
移籍先で活躍した人的補償選手
過去30人以上もの選手が、人的補償で他球団に移籍しました。ここからは、FA選手に勝るとも劣らない活躍を見せた選手たちをご紹介しましょう。
福地寿樹
2007年、石井一久選手のFA移籍に伴い、西武からヤクルトに人的補償で移籍したのが、福地寿樹選手。
俊足が武器の福地選手は、移籍初年度の2008年から、1番打者としてレギュラーに定着します。
最終的に131試合に出場。初の規定打席に到達し、打率.320・9本塁打・61打点と自己最高の成績を残しました。さらに、42盗塁で盗塁王のタイトルも獲得。人的補償で他球団に移籍し、タイトルを獲得したのは福地選手が唯一のケースです。
翌年の2009年も42盗塁を記録し、2年連続で盗塁王に輝きました。
一岡竜司
実は、一岡選手は巨人での実績がほとんどありませんでした。しかし、移籍初年度の2014年、中継ぎとして開幕一軍入りを果たすと、3月29日の中日戦でプロ初ホールドを記録。
さらに、4月27日にはプロ初勝利を、古巣・巨人相手に記録します。
以降も中継ぎとしてチームを支え、広島のリーグ3連覇(2016~2018年)にも大きく貢献しました。特に2017・2018年は、ともに59試合に登板。勝利の方程式として、フル回転しました。
酒居知史
2019年、美馬学選手のFA移籍に伴い、ロッテから楽天に移籍した酒居知史選手。酒居選手は、初めて人的補償で楽天に移籍した選手であり、令和初の人的補償選手でもあります。
移籍初年度の2020年、中継ぎとして46試合に登板し、12ホールドを記録。翌年の2021年には、さらに登板数を増やし、54試合で28ホールドをマークします。
以降も、2022年・34試合、2023年・47試合と、安定して投げ続けており、楽天リリーフ陣にとって、なくてはならない存在です。
2024年は49試合に登板、通算100ホールドを達成した酒居選手。FA権を取得しましたが、楽天への愛着もあり、残留を決断しました。
田中正義
2023年、近藤健介選手のFA移籍で、ソフトバンクから日本ハムに移籍したのが田中正義選手です。
ドラフト会議では5球団競合と、非常に評価が高かった田中選手。しかし、怪我が多く、ソフトバンクではなかなか活躍できませんでした。
日本ハムで迎えた2023年シーズン、抑えの役割を任されると、47試合に登板し、25セーブを記録。
2024年は開幕から抑えを務めます。セーブ失敗による配置転換も経験しましたが、前年を上回る53試合に登板し、12ホールド20セーブをマークしました。
人的補償による移籍で、野球人生が大きく変わった選手です。
→【プロ野球ドラフト会議】歴代の指名競合数ランキング一覧【1位指名の最多重複数は?】
まとめ
人的補償やプロテクトは、プロ野球ファンの中で特に盛り上がる話題です。
シーズン中は移籍先での活躍、前所属球団との対戦が大きな見どころです。人的補償に注目して、プロ野球をさらに楽しみましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。