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この記事は「ポスティングシステムについて詳しく知りたいな」と思われている方に向けた内容になっています。
プロ野球のシーズンオフになると、ポスティングシステムを利用しての選手の移籍が話題になりますが、どのような制度か分かりづらい部分がありますよね。
この記事では野球観戦歴20年以上の筆者がポスティングシステムについてお伝えしていきます。
この記事を読めばあなたもポスティングシステムに詳しくなれますよ。
ポスティングシステムとは

ポスティングシステムとは「プロ野球で認められている移籍システムのひとつ」です。
海外FA権を持たない選手が海外リーグへの移籍を希望した際、所属球団が行使する権利であり「入札制度」とも呼ばれています。
ポスティングシステムは現在と過去で異なる部分があり、まずは現在のシステムをお伝えしていきます。
現在のポスティングシステム
現在のポスティングシステムの流れを見ていきましょう。
- 申請手続き期間は11月1日~12月5日
- 所属球団が移籍希望選手のポスティングを認めた場合、NPB(日本野球機構)を通じてMLB(大リーグ機構)にその選手が契約可能であることを告知する
- 大リーグ全30球団に契約可能選手として通知されてから30日間の交渉期間が設けられ、譲渡金を支払う意思がある全ての球団と交渉が可能
- 選手とMLB球団で契約合意すると移籍が成立する
- 選手の契約総額に応じた譲渡金がMLB球団から所属球団へ支払われる
譲渡金とは
ポスティングシステムの大きな特徴として「譲渡金」があります。
- 譲渡金…選手とMLB球団との交渉成立時に、MLB球団から所属球団へ支払われる金銭
現在の譲渡金は以下のルールが定められています。
譲渡金変動制
メジャー契約の場合(25歳以上でNPB在籍6年以上が必要) |
契約金・年俸・契約解除料の「総額」で変動する A.総額の2500万ドルまでの部分…20% B.総額の2500万~5000万ドルの部分…17.5% C.総額の5000万ドル以上の部分…15% D.出来高…15% |
A+B+C+D=譲渡金 |
マイナー契約の場合(25歳未満かNPB在籍6年未満は自動的) |
契約金の25%=譲渡金 |
譲渡金変動制でポスティング移籍した選手
年度 | 選手 | 所属球団 | 移籍した球団 |
2018年 | 菊池雄星 | 埼玉西武ライオンズ | シアトル・マリナーズ |
2019年 | 筒香嘉智 | 横浜DeNAベイスターズ | タンパベイ・レイズ |
2019年 | 山口俊 | 読売ジャイアンツ | トロント・ブルージェイズ |
2020年 | 有原航平 | 北海道日本ハムファイターズ | テキサス・レンジャーズ |
続いて過去のポスティングシステムについて見ていきましょう。
ポスティングシステム導入の経緯

ポスティングシステム導入のきっかけは1995年の近鉄バファローズ・野茂英雄選手のMLB移籍です。
野茂選手はFAではなかったため、自らの意思での移籍はできませんでしたが、任意引退公示を受けることでロサンゼルス・ドジャースと契約を結びました。
この出来事をきっかけにして1998年に「日米間選手契約に関する協定」が調印されポスティングシステムが成立したのです。
ポスティングシステムの変化
封印入札方式
「封印入札方式」はポスティングシステム成立当初から2012年までの制度です。
- 移籍希望選手との契約交渉を希望するMLB球団は交渉権の対価となる金額を非公開で入札(入札する金額に上限はない)
- 最高金額を入札した球団に移籍希望選手との30日間の独占交渉権が与えられる(移籍希望選手は移籍先球団を選ぶことができない)
- 移籍希望選手とMLB球団との契約が成立した場合に全額が一括で支払われる
- 交渉期限内に入札したMLB球団との契約合意がなかった場合、入札金は支払われない
封印入札方式で移籍した主な選手
年度 | 選手 | 所属球団 | 移籍した球団 | 入札金 |
2000年 | イチロー | オリックスブルーウェーブ | シアトル・マリナーズ | 1312万5000ドル |
2001年 | 石井一久 | ヤクルトスワローズ | ロサンゼルス・ドジャース | 1126万4055ドル |
2006年 | 松坂大輔 | 西武ライオンズ | ボストン・レッドソックス | 5111万1111ドル11セント |
2006年 | 井川慶 | 阪神タイガース | ニューヨーク・ヤンキース | 2600万194ドル |
2010年 | 西岡剛 | 千葉ロッテマリーンズ | ミネソタ・ツインズ | 532万9000ドル |
2011年 | ダルビッシュ有 | 北海道日本ハムファイターズ | テキサス・レンジャーズ | 5170万3411ドル |
ただ封印入札方式は球団に多額の入札金が入る一方で様々な問題点がありました。
- 契約する意思の低いMLB球団が入札する可能性(他球団の移籍希望選手獲得を妨害できる)
- 入札金に上限がないため、MLB球団の評価が非常に高い選手への入札額が高騰する
- MLB球団によっては入札額の高騰から獲得競争に加わりにくい
上記の問題点を解消する制度が「譲渡金額を所属球団が設定する方式」です。
譲渡金額を所属球団が設定する方式
2014年から2017年までの制度です。
- 移籍希望選手の所属球団は交渉権の対価となる譲渡金(上限2000万ドル)を設定し、NPBを通じてMLBにその選手が契約可能であることを告知する
- 翌日から30日間の交渉期間が設けられ、譲渡金に応札するMLB全球団が移籍希望選手との契約交渉を行うことができる
- 移籍希望選手との契約が合意すると、MLB球団から所属球団に譲渡金が一括または分割で支払われる
封印入札方式とは異なり、複数球団が移籍希望選手と交渉可能になりました。
譲渡金額を所属球団が設定する方式で移籍した選手
年度 | 選手 | 所属球団 | 移籍した球団 | 譲渡金額 |
2013年 | 田中将大 | 東北楽天ゴールデンイーグルス | ニューヨーク・ヤンキース | 2000万ドル |
2015年 | 前田健太 | 広島東洋カープ | ロサンゼルス・ドジャース | 2000万ドル |
2017年 | 大谷翔平 | 北海道日本ハムファイターズ | ロサンゼルス・エンゼルス | 2000万ドル |
2017年 | 牧田和久 | 埼玉西武ライオンズ | サンディエゴ・パドレス | 50万ドル |
まとめ

ポスティングシステムは成立当初と比べて大きくルールが変わりました。
ポスティングシステムは球団の権利であり、考え方も球団によって異なります。
1年でも早くMLB球団でプレーしたい選手の気持ちは理解できますし、所属球団が貴重な選手の放出に悩むのも当然ですよね。
選手や所属球団、MLB球団と様々な立場からポスティングシステムを考えるのも面白いですよ。
ポスティングシステムのルールや流れを覚えて、より深くプロ野球を楽しみましょう。
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