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プロ野球のポスティングシステムとは?仕組みや譲渡金、25歳ルールをわかりやすく解説

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  • プロ野球のポスティングシステムがわかりづらい
  • ポスティングシステムの仕組みや譲渡金について詳しく教えて!
  • ポスティングシステムの25歳ルールって何?

プロ野球のシーズンオフになると、ポスティングシステムでの選手の移籍が話題になります。しかし、仕組みがわかりづらく、ポスティングシステムについて詳しく知りたい人は多いです

筆者はプロ野球を30年以上観てきました。シーズンオフの話題も欠かさずチェックしています。

そこでこの記事では、ポスティングシステムの仕組みや譲渡金、25歳ルールまでまとめて解説します。また、過去にポスティングシステムを利用して移籍した選手もご紹介します

この記事を読めば、ポスティングシステムに詳しくなり、プロ野球のシーズンオフを今以上に楽しめます。

プロ野球のポスティングシステムとは

ポスティングシステムとは、海外FA権を持たない選手が海外リーグへの移籍を希望した際、所属球団が行使する制度です。プロ野球で認められている移籍システムのひとつで「入札制度」とも呼ばれています。

ポスティングシステムの権利は球団側にあり、選手がどれだけ希望しても、球団が認めない限りポスティングシステムは使えません

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ポスティングシステムは現在と過去で異なる部分が多いです。まずは現在のシステムを解説します。

2024年時点のポスティングシステム

2024年時点でのポスティングシステムの流れは以下です。

  1. 所属球団がポスティングシステムでの移籍を容認する
  2. 球団は期間内にNPB(日本野球機構)にポスティング申請を行う(申請手続き期間は11月1日~12月15日)
  3. ポスティング申請日の翌日から45日間、MLBの全ての球団と交渉が可能となる
  4. 選手とMLB球団で契約合意すると移籍が成立する
  5. 選手の契約総額に応じた譲渡金が、MLB球団から所属球団へ支払われる

ポスティングシステムの大きな特徴が譲渡金です

譲渡金とは

選手とMLB球団との交渉成立時に、MLB球団から所属球団へ支払われる金銭

現在のポスティングシステムでは「譲渡金変動制」というルールが定められています。次は譲渡金変動制を解説します。

譲渡金変動制

譲渡金変動制は、その名の通り譲渡金の額が契約内容に応じて変動する制度です。

メジャー契約の場合
(25歳以上でNPB在籍6年以上が必要)
マイナー契約の場合(25歳ルール)
(25歳未満かNPB在籍6年未満は自動的)
契約金・年俸・契約解除料の「総額」で変動する
A.総額の2500万ドルまでの部分…20%
B.総額の2500万~5000万ドルの部分…17.5%
C.総額の5000万ドル以上の部分…15%
D.出来高…15%

譲渡金=A+B+C+D
譲渡金=契約金の25%

ポスティングシステムのニュースで、度々話題になるのが「25歳ルール」です。

25歳ルール

メジャー球団が25歳未満の海外選手を獲得する際、契約金や年俸総額が制限されて、マイナー契約しか結べないルール

もともとはキューバ選手などを法外な金額で「青田買い」するのを防ぐための規定。

譲渡金変動制でポスティング移籍した選手

年度選手所属球団移籍した球団譲渡金額
2018年菊池雄星埼玉西武ライオンズシアトル・マリナーズ1027万5000ドル
2019年筒香嘉智横浜DeNAベイスターズタンパベイ・レイズ240万ドル
2019年山口俊読売ジャイアンツトロント・ブルージェイズ127万ドル
2020年有原航平北海道日本ハムファイターズテキサス・レンジャーズ124万ドル
2021年鈴木誠也広島東洋カープシカゴ・カブス1462万5000ドル
2022年吉田正尚オリックス・バファローズボストン・レッドソックス1537万5000ドル
2022年藤浪晋太郎阪神タイガースオークランド・アスレチックス65万ドル
2023年山本由伸オリックス・バファローズロサンゼルス・ドジャース5062万5000ドル
2023年今永昇太横浜DeNAベイスターズシカゴ・カブス982万5000ドル
2023年上沢直之北海道日本ハムファイターズタンパベイ・レイズ6250ドル~51万5250ドル

ポスティングシステム導入の経緯

ポスティングシステム導入のきっかけは、1995年の近鉄バファローズ・野茂英雄選手のMLB移籍です

野茂選手はFAではなかったため、自らの意思での移籍はできませんでした。しかし、任意引退公示を受けることで、ロサンゼルス・ドジャースと契約を結びます。

この出来事をきっかけにして1998年に「日米間選手契約に関する協定」が調印され、ポスティングシステムが成立しました。

ポスティングシステムの変化

1998年に成立したポスティングシステム。長い歴史の中で、ポスティングシステムは変化してきました。

封印入札方式

「封印入札方式」はポスティングシステム成立当初から2012年までの制度です。

  1. 移籍希望選手との契約交渉を希望するMLB球団は交渉権の対価となる金額を非公開で入札(入札する金額に上限はない)
  2. 最高金額を入札した球団に移籍希望選手との30日間の独占交渉権が与えられる(移籍希望選手は移籍先球団を選ぶことができない)
  3. 移籍希望選手とMLB球団との契約が成立した場合に全額が一括で支払われる
  4. 交渉期限内に入札したMLB球団との契約合意がなかった場合、入札金は支払われない

封印入札方式で移籍した選手

年度選手所属球団移籍した球団入札金
1998年アレファンドロ・ケサダ広島東洋カープシンシナティ・レッズ40万1ドル
2000年イチローオリックス・ブルーウェーブシアトル・マリナーズ1312万5000ドル
2001年石井一久ヤクルトスワローズロサンゼルス・ドジャース1126万4055ドル
2002年ラモン・ラミーレス広島東洋カープニューヨーク・ヤンキース30万50ドル
2003年大塚晶文中日ドラゴンズサンディエゴ・パドレス30万ドル
2004年中村紀洋大阪近鉄バファローズロサンゼルス・ドジャース非公表
2005年森慎二西武ライオンズタンパベイ・デビルレイズ75万ドル
2006年松坂大輔西武ライオンズボストン・レッドソックス5111万1111ドル11セント
2006年岩村明憲東京ヤクルトスワローズタンパベイ・デビルレイズ450万ドル
2006年井川慶阪神タイガースニューヨーク・ヤンキース2600万194ドル
2010年西岡剛千葉ロッテマリーンズミネソタ・ツインズ532万9000ドル
2011年青木宣親東京ヤクルトスワローズミルウォーキー・ブルワーズ250万ドル
2011年ダルビッシュ有北海道日本ハムファイターズテキサス・レンジャーズ5170万3411ドル

封印入札方式では、松坂大輔選手やダルビッシュ有選手が5000万ドル以上と、高額な入札額が話題に。一方で、封印入札方式には、様々な問題点もありました。

  • 契約する意思の低いMLB球団が入札する可能性(他球団の移籍希望選手獲得を妨害できる)
  • 入札金に上限がないため、MLB球団の評価が非常に高い選手への入札額が高騰する
  • MLB球団によっては、入札額の高騰から獲得競争に加わりにくい

上記の問題点を解消する制度が「譲渡金額を所属球団が設定する方式」です

譲渡金額を所属球団が設定する方式

「譲渡金額を所属球団が設定する方式」は、2014年から2017年までの制度です。

  1. 移籍希望選手の所属球団は交渉権の対価となる譲渡金(上限2000万ドル)を設定し、NPBを通じてMLBにその選手が契約可能であることを告知する
  2. 翌日から30日間の交渉期間が設けられ、譲渡金に応札するMLB全球団が移籍希望選手との契約交渉を行うことができる
  3. 移籍希望選手との契約が合意すると、MLB球団から所属球団に譲渡金が一括または分割で支払われる

封印入札方式とは異なり、複数球団が移籍希望選手と交渉可能になりました。

譲渡金額を所属球団が設定する方式で移籍した選手

年度選手所属球団移籍した球団譲渡金額
2013年田中将大東北楽天ゴールデンイーグルスニューヨーク・ヤンキース2000万ドル
2015年前田健太広島東洋カープロサンゼルス・ドジャース2000万ドル
2017年大谷翔平北海道日本ハムファイターズロサンゼルス・エンゼルス2000万ドル
2017年牧田和久埼玉西武ライオンズサンディエゴ・パドレス50万ドル

まとめ

ポスティングシステムは成立当初と比べて大きくルールが変わりました。

ポスティングシステムは球団の権利であり、考え方も球団によって異なります。1年でも早くメジャーでプレーしたい選手の気持ちは理解できます。一方で、所属球団が貴重な選手の放出に悩むのも当然でしょう。

選手や所属球団、MLB球団と様々な立場からポスティングシステムを考えるのも面白いです。

ポスティングシステムのルールや流れを覚えて、より深くプロ野球を楽しみましょう。

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