- プロ野球のFA(フリーエージェント)が難しくて分かりづらい
- FAのルールやFA権の取得条件を詳しく知りたい
- 人的補償や金銭補償についても教えて
プロ野球のシーズンオフは、FA(フリーエージェント)のニュースが大きく取り上げられます。しかし、FA関連のルールは難しく、詳しく知りたい人は非常に多いです。
筆者はプロ野球を30年以上観てきました。シーズンオフの話題も欠かさずチェックしています。
そこでこの記事では、FAのルールやFA権の取得条件、補償に関する内容までまとめて解説します。
この記事を読めば、FAに詳しくなり、プロ野球のシーズンオフを今以上に楽しめます。
プロ野球のFA(フリーエージェント)とは
プロ野球におけるFA(フリーエージェント)とは、選手が他球団と自由に交渉・契約できる状態を指します。
FAとなる権利を「FA権」と呼び、一定の条件を満たすことでFA権を取得できます。FA権取得に関するルールを見てみましょう。
- 1シーズンの1軍登録145日を1年としてカウント
- 規定の年数経過でFA権を取得
- 1シーズン145日を超えて1軍登録されても145日までしかカウントされない
- 1軍登録日数が145日に満たないシーズンが複数ある場合は、合算して満145日ごとに1年として計算される
- シーズン途中で所属球団が変わっても、引き継いで計算される
FAと同様、シーズンオフには、ポスティングシステムでの移籍が話題になります。しかし、FAとポスティングシステムは、全く別の制度。FAは「選手の権利」ですが、ポスティングシステムは「球団の権利」です。
→プロ野球のポスティングシステムとは?ルールや譲渡金を解説!
→プロ野球のポスティングシステムとFAの違いとは?【〇〇の権利】
国内FA権と海外FA権
FAは「国内FA権」と「海外FA権」に分かれています。
- 国内FA権
- 日本プロ野球の全球団と交渉・契約できる権利
- 海外FA権
- 日本プロ野球の全球団+海外の球団と交渉・契約できる権利
国内FA権では、日本プロ野球全球団と交渉できるのに対して、海外FA権では、日本プロ野球全球団に加えて、海外の球団とも交渉できます。
国内FA権と海外FA権では、取得するまでに必要な年数が異なります。
国内FA権を取得するのに必要な年数
国内FA権を取得するのに必要な年数は、入団年や高校・大学・社会人で変わります。
選手 | 国内FA権を取得するのに必要な年数 |
2006年までのドラフトで入団した全選手 | 8年(合計1160日) |
2007年以降のドラフトで入団した高校生選手 | 8年(合計1160日) |
2007年以降のドラフトで入団した大学生・社会人選手 | 7年(合計1015日) |
海外FA権を取得するのに必要な年数
海外FA権を取得するのに必要な年数は、全選手共通です。
選手 | 海外FA権を取得するのに必要な年数 |
全選手 | 9年(1305日) |
1軍登録日数に関する特例措置
FA権取得に向けて、1軍登録日数は1年に145日必要です。しかし、1軍登録日数が145日に満たなかった場合でも、特例措置があります。
- 故障者特例措置
- 投手の登録日数加算に関する特例措置
- クライマックスシリーズ特例措置
故障者特例措置
「故障者特例措置」とは、グラウンド上で発生した故障が原因で、1軍登録日数が145日に満たない場合の特例措置。
登録抹消日から2軍公式戦に出場するまでの日数のうち、最大60日が加算されます。また、シーズン中に複数回の登録抹消が起こった場合でも、計算して最大60日まで加算されます。
ただし、前年の1軍登録日数が145日以上を満たしていることが条件。さらに、故障者特例措置が適用されると、翌年は特例措置の対象外となります。
投手の登録日数加算に関する特例措置
投手にのみ適用される特例措置があります。先発ローテーションと球団が判断した投手に対する特例措置です。
- 開幕日から7日以内に1軍登録された場合、開幕日からの日数を加算
- オールスターゲーム第1戦予定日の7日前以降に登録抹消され、かつオールスターゲーム最終戦後7日以内に再登録された場合、抹消された日から再登録前日までの日数を加算
開幕直後やオールスター前後は、登板予定のない先発ローテーション投手は1軍登録されないケースが多いため、登録されていない期間を加算します。
クライマックスシリーズ特例措置
クライマックスシリーズに関しても特例措置があります。
- レギュラーシーズン終了からクライマックスシリーズのチーム初戦まで10日以上ある場合、自動的に登録抹消される
- クライマックスシリーズで再登録されると、抹消されていた期間の日数も加算される
ペナントレースだけでなく、クライマックスシリーズでの登録日数もカウントされます。
FA権取得後の選択肢
FA権を取得した選手には、以下の選択肢があります。
- FA権の行使(FA宣言)
- FA権を行使せず、所属チームに残留
FA権を行使(FA宣言)
FA権取得後の選択肢として「FA権を行使(FA宣言)」があります。
FA権を行使することで、所属球団以外とも交渉・契約できるようになります。
- 両リーグの公式戦終了日2日後に、その年にFA権を取得した選手、およびFA権を持続している選手がコミッショナーより公示される(コミッショナーとは日本野球機構における最高責任者)
- 日本シリーズ終了翌日から、土・日・祝日を除く7日以内にコミッショナー宛に文書で申請(FA権を行使)
- 8日目の午後3時にコミッショナーより「FA宣言選手」として公示される
- 「FA宣言選手」として公示された翌日より所属球団以外とも交渉を行うことが可能となる
FA権を行使した後、所属球団や獲得を希望する球団と交渉し、移籍か残留を決定します。交渉期限は設けられていませんが、年内に決まることが多いです。
FA権を行使しない
「FA権を行使しない」のも選択肢のひとつ。
FA権を行使しない場合、翌年も所属球団でプレーします。行使しなかったFA権は翌年以降に持ち越されます。
FA権を行使しない理由
- 所属球団でプレーを続けたい
- 思ったような成績を残せなかったため、翌年にしっかりとした成績を残して、FA権について考えたい
- 翌年以降に取得予定の海外FA権の行使、メジャー挑戦を考えている
FA権を取得した選手が残留すると、所属球団は戦力ダウンを避けられます。
FA移籍に伴う補償
FA権を行使し他球団への移籍が決定すると、移籍先の球団から前球団への補償が発生します。
補償には「金銭補償」と「人的補償」があります。補償の有無や内容は、FA選手の旧年俸のランクによって決まります。
旧年俸のランク
選手は前球団での旧年俸順にランク付けされています。
ランク | 旧年俸の順位 |
Aランク | 日本人選手の旧年俸1~3位 |
Bランク | 日本人選手の旧年俸4~10位 |
Cランク | 日本人選手の旧年俸11位以下 |
金銭補償
金銭による補償です。FA選手の旧年俸とランクで支払われる金額は変わります。
人的補償
前球団が移籍先球団の選手1人を指名し、指名された選手を前球団に与える補償です。
どの選手でも人的補償で指名できる訳ではありません。以下の選手以外から指名する必要があります。
- 移籍先球団がプロテクト(保護)した28人の選手
- FA権取得により外国人枠の適用外になった選手を含む外国人選手
- 直近のドラフトで獲得した新人選手
- 育成契約選手
プロテクトの選手リストはファンに公開されませんが、驚くような選手がプロテクトから外れているケースが過去にはありました。
もし、人的補償に指名された選手が移籍を拒否した場合、その選手は資格停止選手となります。資格停止選手は処分が解除されるまで試合出場できません。
→人的補償とは?ルールを解説|過去の補償選手一覧も紹介【プロ野球】
以下に補償内容をまとめました。金銭補償は1回目と2回目以降のFAで金額が異なります。
1回目のFA移籍 | 人的補償あり | 人的補償なし |
Aランク | 選手1人+旧年俸の0.5倍の金銭 | 旧年俸の0.8倍の金銭 |
Bランク | 選手1人+旧年俸の0.4倍の金銭 | 旧年俸の0.6倍の金銭 |
Cランク | なし | なし |
2回目以降のFA移籍 | 人的補償あり | 人的補償なし |
Aランク | 選手1人+旧年俸の0.25倍の金銭 | 旧年俸の0.4倍の金銭 |
Bランク | 選手1人+旧年俸の0.2倍の金銭 | 旧年俸の0.3倍の金銭 |
Cランク | なし | なし |
海外FAでの補償はどうなる?
海外FAで日本プロ野球以外の海外球団に移籍する場合は、基本的に補償は発生しません。海外球団への移籍に対する補償は未整備の状態です。
FAに関するその他のルール
FA権の再取得
FA権の再取得は、FA権を行使しての残留・移籍を問わず4年後です。再取得したFA権は全て海外移籍が可能なFA権となります。
FAで移籍する選手に支払われる年俸
FA移籍1年目に支払われる年俸は、原則として旧年俸(現状維持)が上限です。理由は複数球団による過度な獲得競争を防ぐため。
また、FAで移籍する選手は複数年契約を結ぶことが多いです。契約年数や出来高・2年目以降の年俸の上昇に制約はありません。
1球団がFAで獲得できる人数
1球団がFAで獲得できる人数は、ランクA・Bの選手は2人までです。FA権を行使し残留する選手・ランクCの選手は人数に含まれません。
例えば、ランクAの選手2人とランクCの選手1人なら、3人同時に獲得可能です。ただし、FA権を行使した選手が多い時は以下のように変わります。
FA権を行使した人数 | 獲得可能人数 |
21人以上30人以下 | 3人まで |
31人以上40人以下 | 4人まで |
41人以上 | 5人まで |
まとめ
FA権は選手が長年頑張ってきた証であり、権利の行使は選手にとって大きな決断。選手には後悔のない選択をしてほしいです。
FAの話題はシーズンオフの中心になることが多く、ファンの注目度も高いです。FAのシステムや一連の流れを覚えて、シーズンオフをより楽しみましょう。
→【プロ野球】7つの単語で1年間の流れを覚えよう【初心者向け】