- 現役ドラフトのルールがわかりづらい
- 現役ドラフトではどの選手を指名できるの?
- 過去の移籍選手や活躍した選手を知りたい!
プロ野球のシーズンオフに話題となる現役ドラフト。しかし、ルールが難しく、現役ドラフトについて詳しく知りたい人は非常に多いです。
筆者はプロ野球を30年以上観てきました。シーズンオフの話題も欠かさずチェックしています。
そこでこの記事では、現役ドラフトの目的やルールをまとめて解説します。また、過去に現役ドラフトで移籍した選手や活躍した選手もご紹介します。
この記事を読めば、現役ドラフトに詳しくなり、プロ野球のシーズンオフを今以上に楽しめます。
現役ドラフトは新たな環境でチャンスを与える制度
プロ野球の現役ドラフトは、実力はありながら、出場機会が少ない選手の移籍を活性化する目的で始まりました。2022年(令和4年)から行われています。
メジャーで実施されている「ルール5(ファイブ)ドラフト」を参考にしています。現役ドラフトによって、各球団最低1名は移籍することになります。
→ルール5(ファイブ)ドラフトについて詳しくはこちら(ページ下部へジャンプします)
現役ドラフトの開催時期は12月
現役ドラフトは毎年12月に行われています。2024年の現役ドラフトは、12月9日(月)に実施されます。
年度 | 開催日 |
2022年 | 12月9日(金) |
2023年 | 12月8日(金) |
2024年 | 12月9日(月) |
現役ドラフトの指名対象選手
現役ドラフトでは、12球団が事前に提出した選手(2名以上)が指名対象になります。ただし、以下の選手は指名対象にできません。
- 外国人選手
- 複数年契約を結んでいる選手
- 翌季の年俸が5,000万円以上(ただし、1名に限り年俸5,000万円以上1億円未満の選手を対象にできる)
- FA権を保有している、または行使したことがある
- 育成選手
- 前年の年度連盟選手権試合終了の翌日以降に、選手契約の譲渡によって獲得した選手(前年のオフ~今シーズンの間にトレードなどで移籍した選手と言い換えられる)
- シーズン終了後に育成から支配下契約となった選手
※年俸5,000万円以上1億円未満の選手1名を指名対象にした場合でも、5,000万円未満の選手は最低2名以上を指名対象にする必要があります。
また、指名対象に選ばれたことを選手本人に伝えるかは球団次第です。
現役ドラフトの流れ
現役ドラフトでは、まず指名する球団の順番を決めます。
現役ドラフトの指名順の決め方
現役ドラフトの指名順の決め方
- 12球団の指名対象選手から、各球団が獲得したい選手1名に投票する
- 最多得票の球団が、1番目の指名権を得る
- 指名権を得た球団が、最初に投票した選手を獲得する
- 指名権は「獲得された」球団に移る
- 以降は順番に選手を獲得し、12球団が各1名を獲得した時点で、1巡目を終了
最多得票の球団が複数になった場合は、同年のドラフト会議におけるウエーバー順で指名権を決定
獲得された球団が、すでに選手を獲得済みの場合、指名権は最初の得票順により決定する(得票数が同じ場合はウエーバー順)
なお、現役ドラフトでは、条件によって獲得できない選手も存在します。
1巡目で獲得できない選手
- すでに獲得された選手
- 獲得された選手と同じ球団の選手
最初に投票した選手を上記の理由で獲得できない場合、獲得可能な他球団の選手を獲得します。
また、指名権が11番目の球団は、指名権が12番目の球団の選手を獲得します。
ルールが複雑なので、具体例を挙げて流れを把握しましょう。
具体的な流れ
- 12球団の指名対象選手から、各球団が獲得したい選手1名に投票する
- 最多得票は阪神の6票→阪神が1番目の指名権を得る(阪神は最初にソフトバンクのA選手に投票)
- 阪神がソフトバンクのA選手を獲得→指名権は「獲得された」ソフトバンクに移る(ソフトバンクは最初に広島のB選手に投票)
- ソフトバンクが広島のB選手を獲得→指名権は「獲得された」広島に移る(広島は最初にソフトバンクのA選手に投票)
- 広島はソフトバンクのA選手に投票したが、阪神がA選手を獲得済みのため、広島はA選手を獲得できない
- 広島が阪神のC選手を獲得→阪神はすでに選手を獲得済みのため、最初の得票順により指名権を再度決定
- 以降12球団が各1名を獲得した時点で、1巡目を終了
なお、各球団が提出する指名対象選手のリストは秘密情報として開示されません。当日の会議も非公開で行われ、移籍が決定した選手のみ会議後に発表されます。
指名対象選手の情報のうち、獲得された選手の氏名以外の情報について、各球団は秘密保持の義務を負います。
2巡目以降
1巡目終了後、2巡目の獲得意思を示した球団で、2巡目を行います。
2巡目の順番は、参加球団のなかで、1巡目とは逆の順番になります。また、参加しても必ず選手を獲得する必要はありません。指名権が来た段階で獲得を棄権することも可能です。
2巡目で獲得できない選手
- すでに獲得された選手
- 2巡目において、獲得された選手と同じ球団の選手
- 2巡目に参加しなかった球団の選手
過去の現役ドラフトでは、2巡目の指名が成立したケースはありません。
現役ドラフトでの移籍は拒否できる?
現役ドラフトの拒否権は事実上ありません。移籍を拒否して、所属球団に残留を受け入れなかった場合、任意引退で退団となります。
メディカル情報は開示
現役ドラフトでは、故障歴といったメディカル情報を開示します。しかし、メディカル情報の開示には本人の同意が必要です。
メディカル情報開示への同意サインは、指名対象選手に限定せず、多くの選手からサインをもらう形になっています。
現役ドラフトで移籍した選手一覧
2022年
獲得球団 | 選手(前所属球団) | 獲得時点での登録ポジション |
オリックス | 渡邉大樹(ヤクルト) | 外野手 |
ソフトバンク | 古川侑利(日本ハム) | 投手 |
西武 | 陽川尚将(阪神) | 内野手 |
楽天 | 正隨優弥(広島) | 外野手 |
ロッテ | 大下誠一郎(オリックス) | 内野手 |
日本ハム | 松岡洸希(西武) | 投手 |
ヤクルト | 成田翔(ロッテ) | 投手 |
DeNA | 笠原祥太郎(中日) | 投手 |
阪神 | 大竹耕太郎(ソフトバンク) | 投手 |
巨人 | オコエ瑠偉(楽天) | 外野手 |
広島 | 戸根千明(巨人) | 投手 |
中日 | 細川成也(DeNA) | 外野手 |
2023年
獲得球団 | 選手(前所属球団) | 獲得時点での登録ポジション |
阪神 | 漆原大晟(オリックス) | 投手 |
広島 | 内間拓馬(楽天) | 投手 |
DeNA | 佐々木千隼(ロッテ) | 投手 |
巨人 | 馬場皐輔(阪神) | 投手 |
ヤクルト | 北村拓己(巨人) | 内野手 |
中日 | 梅野雄吾(ヤクルト) | 投手 |
オリックス | 鈴木博志(中日) | 投手 |
ロッテ | 愛斗(西武) | 外野手 |
ソフトバンク | 長谷川威展(日本ハム) | 投手 |
楽天 | 櫻井周斗(DeNA) | 投手 |
西武 | 中村祐太(広島) | 投手 |
日本ハム | 水谷瞬(ソフトバンク) | 外野手 |
現役ドラフトで移籍して活躍した選手
大竹耕太郎(2022年・ソフトバンク→阪神)
現役ドラフトで大きく花開いた選手のひとりが、大竹耕太郎選手です。
2022年に行われた現役ドラフトでソフトバンクから阪神に移籍。
ソフトバンク時代は「(ソフトバンクでは)150キロ以上が投げられて当たり前で、そこがボーダーラインみたいなところがあった。スピードガンとの勝負になってしまっていた」と語るように、打者と勝負できていませんでした。
一方で、コントロールを重視するチームカラーの阪神と、多彩な変化球で打者のタイミングを外す大竹選手のスタイルは相性バッチリ。移籍1年目の2023年、開幕から先発ローテーション入りします。
結果的に、シーズンを通して12勝2敗、防御率2.26という素晴らしい成績で、阪神18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一に大きく貢献しました。
翌年の2024年も開幕から先発ローテーションを守った大竹選手。11勝を挙げて2年連続二桁勝利をマーク、さらに自身初の規定投球回にも到達しました。
現役ドラフトによって、野球人生が大きく変わった選手といえるでしょう。
細川成也(2022年・DeNA→中日)
2022年の現役ドラフトで、DeNAから中日へ移籍した細川成也選手も野球人生が大きく変わったひとりです。
高校通算63本塁打の長打力が武器の細川選手。高卒1年目から一軍でプロ初打席本塁打を記録するなど、上々のデビューを飾ります。しかし、以降は年々成績が下がり、DeNAでは思ったような結果を残せませんでした。
移籍した中日では、2023年の春季キャンプから猛アピール。開幕一軍入りすると、シーズンを通して、打率.253、24本塁打、78打点の好成績を記録します。
広いバンテリンドームを本拠地としながらの24本塁打。中日の日本人選手としては、2010年の和田一浩氏・森野将彦氏以来となる、13年ぶりのシーズン20本塁打以上です。
2024年もチームの主軸として、打率.292、23本塁打、67打点を記録した細川選手。自身初となるシーズン全試合出場も果たしました。
水谷瞬(2023年・ソフトバンク→日本ハム)
2023年の現役ドラフトで、ソフトバンクから日本ハムに移籍した水谷瞬選手。ソフトバンクでは、一軍の試合に一度も出場したことがありませんでした。
そんな水谷選手は二軍での好調さを買われて、2024年4月11日の古巣・ソフトバンク戦でプロ初出場、初先発(6番レフト)を果たします。第2打席でプロ初ヒットとなるタイムリーを放ち、初打点もマーク。
水谷選手が大ブレイクしたのが交流戦です。交流戦18試合中、15試合連続ヒットを含む16試合でヒットを放ちました。結果的に64打数28安打で、交流戦史上最高となる打率.438を記録し、交流戦首位打者を獲得。さらに交流戦MVPにも選ばれました。
シーズン成績は、97試合に出場し、打率.287、9本塁打、39打点と、前年まで一軍出場がなかった選手とは思えない好成績を記録。2025年のさらなる飛躍が楽しみです。
ルール5(ファイブ)ドラフト
メジャーで行われている「ルール5(ファイブ)ドラフト」。活躍の場を与えられない選手が、マイナーリーグで飼い殺し状態にならないのが目的で、他チームの現役選手を指名し獲得できる制度です。
日本プロ野球の現役ドラフトは、「ルール5(ファイブ)ドラフト」を参考にしています。ちなみに、ルール5(ファイブ)ドラフトの名前は、メジャーリーグベースボール規約第5条に定められているところから来ています。
ルール5(ファイブ)ドラフトのルール
- 毎年12月に実施
- 選手を獲得したチームは、元のチームに約1,000万円を支払う
- 獲得したチームは、獲得選手を翌シーズン全期間、25人枠に登録する必要がある
- 25人枠から外す場合、獲得選手を元のチームに返す必要がある
(25人枠→メジャー公式戦に出場可能な選手、日本プロ野球でいう一軍)
ルール5(ファイブ)ドラフトの指名対象選手は、メジャー40人枠に登録されていない選手(マイナー契約選手)です。
一方で、指名の対象外となる選手は以下です。
- 18歳以下で入団した場合、ルール5(ファイブ)ドラフト時点で在籍5年未満の選手
- 19歳以上で入団した場合、ルール5(ファイブ)ドラフト時点で在籍4年未満の選手
- メジャー40人枠に登録されている選手(40人枠→メジャー契約選手、40人枠にはメジャー公式戦に出場可能な25人枠も含まれる)
メジャーには、マイナーを含めて大変多くの選手が所属しています。しかし、多くの選手がいるなかで、各チームでメジャー契約を得られるのは、40名のみ。
実力がある選手でも、選手層が厚いチームでは、40名枠に入れない場合があります。そのような有力選手を救う制度が、ルール5(ファイブ)ドラフトです。
まとめ
- 現役ドラフトの目的は、出場機会が少ない選手の移籍の活性化
- 現役ドラフトの開催時期は12月
- 12球団の指名対象選手から、各球団が獲得したい選手1名に投票、最多得票の球団が1番目の指名権を得る
- 現役ドラフトは、メジャーのルール5(ファイブ)ドラフトを参考にしている
現役ドラフトは、大竹選手や細川選手、水谷選手の活躍に代表されるように、一定の成果を出しています。今後、現役ドラフトによって、どのような選手がチャンスをつかみ、活躍するのでしょうか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。